ヒトの全細胞

200種類あると言われる人の細胞を、一つ一つ、全てまとめるつもりです。
2019/1/6 human-cell.comにサイト移転します。よろしくお願いします

2018年02月

線維芽細胞
(fibroblast)


○線維芽細胞とは


線維芽細胞は、結合組織を形成する細胞である。楕円形の核を持つことをその特徴とし、成人でも活発に分裂を続けている。



図1 マウス線維芽細胞 NIH-3T3

○結合組織


結合組織は細胞外を満たしている領域であり、基質と線維成分からなる。
その成分は全て線維芽細胞によって産生されている

1.膠原線維

 膠原線維はコラーゲン線維が会合してできた線維であり、組織に硬さを与えている。線維芽細胞はα鎖の3重螺旋構造のプロコラーゲンを分泌し、間もなくペプチダーゼが作用して両端が切り離され、トロポコラーゲンとなる。トロポコラーゲンは会合して直径100nm程度のコラーゲン原線維を形成し、さらにコラーゲン原線維は会合してコラーゲン線維となる。会合の過程においてコラーゲン分子同士は共有結合を形成し、強度を高めている。

 アミノ酸組成はグリシンやプロリンが多く、またコラーゲンに特異的なヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジンを含む。ヒドロキシプロリン、リジンはプロコラーゲン形成時の水素結合に重要な役目を果たすが、その合成にはビタミンCを必要とするため、ビタミンCが不足するとコラーゲン線維が形成できなくなり、壊血病となる。

 コラーゲンは16種が知られているが、特にⅠ~Ⅳ型が重要である。I型は皮膚や骨、腱に、Ⅱ型は軟骨、Ⅲ型は細網繊維、Ⅳ型は基底版にそれぞれ位置している。

2.弾性線維

 弾性繊維は球状タンパク質のエラスチンと短い線維のマイクロフィブリルによる複合体である。肺胞や動脈壁のような伸び縮みする部位の結合組織に多く、ばねのような弾性を与えている。機械的な力で直線的構造をとることが可能なエラスチンが、まるまった状態で安定であることに因る。線維芽細胞で合成され、互いに架橋した編み目構造をとっている。コラーゲン繊維を支える働きもある。

3.細網線維

 Ⅲ型コラーゲンからなる細い線維で、骨髄の造血組織やリンパ組織で観察される。直径は20nm程度であり、太くなることはない。その多くは線維芽細胞が産生するが、末梢神経のシュワン細胞や血管・消化管の平滑筋細胞も産生する。

4.基質
 
 結合組織から線維を除いたもので、タンパク質やムコ多糖類を含んだ細胞外液である。多糖類はグリコサミノグリカンと呼ばれ、多数のグリコサミノグリカンが1つのコア蛋白と結合し、プロテオグリカンを構成する。これらも線維芽細胞が産生する。

 グリコサミノグリカンとしては、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸などが知られている。軟骨ではⅡ型コラーゲン線維がコンドロイチン・ヒアルロン酸と共にクッション機能をもたらしていると考えられているため、これらはサプリメントとして重宝されている。


○フィブロネクチン


 線維芽細胞はまた、結合組織の基礎部となるフィブロネクチンを分泌する。フィブロネクチンは細胞表面のインテグリンと、細胞外に分泌されたコラーゲンやプロテオグリカン類とに結合し、細胞と細胞外をつないでいる分子である。

 創傷治癒の過程において、フィブリン凝固物を置き換えるのものを肉芽組織というが、これはすなわち線維芽細胞が産生したコラーゲンである。傷に集まったマクロファージからの刺激を受けた線維芽細胞がコラーゲンやフィブロネクチンなどの各種細胞外マトリックスのタンパク質を産生し、細胞外環境を整えている。治癒後には消滅する。

「Fibronectin」の画像検索結果
図2 フィブロネクチン(My biosource.com より)

○まとめ


・線維芽細胞は、結合組織を産生する細胞である。

・成人でも盛んに分裂を続けている。

・結合組織は、膠原繊維・弾性繊維・細網繊維・基質とに大別できる。






〇参考文献
・Qシリーズ 新組織学

尿細管上皮細胞
(renal tubular epithelial cell)

尿細管上皮細胞とは


尿細管上皮細胞は、その名の通り尿細管の上皮細胞である。近位尿細管ヘンレループ遠位尿細管緻密斑でそれぞれ異なる特徴を持つ。

尿細管


尿細管は、ボウマン嚢で濾過された原尿を運ぶ管である。ボウマン嚢や糸球体は腎臓の皮質に位置しているが、原尿は尿細管を通って髄質へと運ばれる。その後、ヘンレのループで向きを反転して再び皮質に戻り、集合管へと注がれている。ヘンレループより前を近位尿細管、ヘンレループより後の部分を遠位尿細管という。


図1 尿細管の構造と機能 

 



近位尿細管


近位尿細管に位置する上皮細胞は立方で円形の核を有し、強い好酸性を示す。基底膜に基底線条、管腔側には刷子縁と呼ばれる構造が見られる。基底線条はミトコンドリアが縦向きに密に並んだ構造であり、産生するエネルギーを用いて再吸収を行っている。刷子縁は不揃いな微絨毛が密に形成された構造であり、近位尿細管のみに見られる。

近位尿細管は最も再吸収が盛んな部位であり、ほぼすべての糖やアミノ酸、Na、Clイオンなどが能動的に再吸収されている。浸透圧を利用した水の再吸収も行われており、結果として原尿の65%はここで吸収されることになる。


ヘンレループ


ヘンレループは近位尿細管に続く部位で、非常に細い。上皮細胞は単層の扁平であり、絨毛はなく、ミトコンドリアも非常に少ない。水やイオンの再吸収を行っている。皮質から髄質方向への前半部を下行脚、髄質から皮質への後半を上行脚という。

ヘンレループでの再吸収は、対向流交換系という仕組みを用いている。

下行脚の上皮はイオンの透過を許さずに水のみを再吸収するため、深くなるにつれて原尿の濃度・浸透圧は上昇していく。同時に外部環境も深くなることで浸透圧が上昇していくため、水の再吸収は続く。一方、上行脚ではイオンの能動的再吸収が起こるものの、水の透過を許さない。そのため上に行くにつれてイオン濃度が低下していくが、それに従って再吸収効率も低下していくため、腎髄質の濃度勾配を作り出していると言える。これを対向流交換系という。

30%程度の原尿はここで再吸収される。


図2 ヘンレループ 看護roo より


遠位尿細管


遠位尿細管はヘンレループに続く部位で、ミトコンドリアが豊富に存在する。基底線条はみられない。副腎皮質から分泌されるアルドステロンが作用すると、Na+を再吸収し、K+を排泄する。Na+と同時に水も再吸収されるため、血圧をあげる向きに働く。炭酸水素塩を吸収し、プロトンを分泌することによって血液のpHを上げるように調節する働きもある。

遠位尿細管上皮のうち、特に糸球体に近い部分を緻密斑と呼ぶ。丈が高くて密集していることがその特徴であり、尿中のCl-イオン濃度の低下に反応してプロスタグランジンを生成し、傍糸球体細胞からのレニンの産生を促す。緻密斑・傍糸球体細胞・糸球体外メサンギウム細胞を合わせて傍糸球体装置と呼ぶ。



関連:傍糸球体細胞 メサンギウム細胞

尿沈渣


尿を遠心分離し、沈殿した細菌や細胞成分を顕微鏡で観察する検査のことを「尿沈渣」と呼ぶ。視野の中に赤血球や白血球・上皮細胞・円柱などがいくつ含まれるかを計測する。


尿細管上皮細胞が尿沈渣中に見出されるということは、尿細管の異常を意味する。腎血流の低下による急性尿細管壊死や腎毒による中毒性尿細管壊死糸球体の疾患が原因であり、放置すれば腎機能低下のきっかけとなる。





関連項目


参考文献

・看護roo 利尿薬の選び方
・Qシリーズ 新組織学
広島市医師会だより (第498号 付録)

傍糸球体細胞
(Juxtaglomerular cell)


○傍糸球体細胞とは

傍糸球体細胞は糸球体に隣接する細胞種であり、尿細管上皮細胞や糸球体外メサンギウム細胞と共に傍糸球体装置を構成する。緻密斑からのシグナルに応答してレニンを産生する働きを持つ。輸入細動脈の壁に位置していることから、特殊化した平滑筋細胞と考えられている。




図1 糸球体
 6で示された細胞が傍糸球体細胞である。緻密斑(7)と糸球体外メサンギウム細胞(5b)と共に傍糸球体装置を形成する。9が輸入細動脈である。





○レニン分泌制御

血圧が低下したとき、ろ過効率が低下するため、尿細管を流れる原尿の量は減少する。ところがヘンレのループにおけるNa、Clイオンの能動的な再吸収効率は変わらないため、遠位尿細管でのNa、Cl濃度は低下する。遠位尿細管の緻密班は尿中Cl-濃度を検知する機構を持っており、低濃度の時に多くのプロスタグランジンを放出して傍糸球体細胞を刺激する。刺激を受けた傍糸球体細胞がレニンを輸入細動脈に放出することによって、レニンーアンジオテンシンーアルドステロンが始まる。

また傍糸球体細胞はアドレナリンβ1受容体を持っており、交感神経からのノルアドレナリンの刺激によってもレニンの産生を増大させることができる。「闘争と逃走」の神経である交感神経の刺激でレニンが増加し、血圧が高まる。

○レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系

レニンは、肝臓や脂肪細胞にて合成されたアンジオテンシノーゲンというタンパク質のペプチド結合を切断し、10アミノ酸から成るアンジオテンシンIを合成する酵素である。合成されたアンジオテンシンIは血中を流れて肺の毛細血管に至り、アンジオテンシン変換酵素(ACE)等の作用を受けてアンジオテンシンIIとなる。

アンジオテンシンIIは血管平滑筋に作用して収縮を強めると同時に、副腎皮質の球状帯に作用してアルドステロンの分泌を、脳下垂体に作用してバソプレシンの分泌を促す。アルドステロンは尿細管におけるNaの再吸収を促進(血中Naの増加=浸透圧の増加=水分の増加)し、バソプレシンは利尿を抑えるホルモン(血流量増加)である。アンジオテンシンはこれら三つの作用によって血圧を高めている。これらを総称してレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系と呼ぶ。レニンを阻害するアリスキレンは、高血圧の治療薬として用いられている。




〇参考文献
・アリスキレン
 http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/091029html/index.html
・Wikipedia 
 レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系 
 傍糸球体細胞

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肥満細胞
(Mast cell)


○肥満細胞とは


肥満細胞は、粘膜の下や結合組織に位置しアレルギーの原因となる免疫細胞である。膨れた様子が肥満のように見えるために肥満細胞と呼ぶが、肥満とはあまり関係がない。

ドイツ人によって名付けられ、マスト細胞とも呼ばれている。なお、「マスト」の意味するところが何なのかは諸説あり、よく分かっていない。



図1 マスト細胞





○Ⅰ型アレルギーとは


肥満細胞はI型アレルギーを引き起こす原因の細胞である。好塩基球と同様、マスト細胞の膜上にFc受容体(3)が存在し、アレルゲンに応答したB細胞が産生したIgE(2)型の免疫グロブリンを結合している。


受容体は通常それぞれ離れているが、抗原(1)が二つのIgE間を架橋したとき、近接したことによってシグナルが走る。すると細胞内のカルシウムとcGMPの濃度が上昇し、蓄えられたヒスタミン顆粒(5)が放出(脱顆粒)される。また膜上の酵素も活性化し、膜脂質からアラキドン酸カスケードによってプロスタグランジンやロイコトリエン(7)を作る。


放出されたヒスタミン(4)やプロスタグランジン(7)は平滑筋の収縮・血管の拡張・粘液の分泌・神経刺激などの炎症反応を引き起こす。これがⅠ型アレルギーである。



図2 脱顆粒

○ヒスタミンの作用

脂肪細胞が放出したヒスタミンは血管内皮細胞に作用して血管透過性が向上し、平滑筋に作用して気管支拡張・血管拡張が引き起こされる。アレルギー反応に重要なヒスタミンの受容体を「H1受容体」と呼ぶ。アレルギーを抑えるために用いられる抗ヒスタミン剤はヒスタミンH1受容体の阻害薬である。


H1受容体は中枢神経にも存在するため、アレルギーを抑えると同時に眠気を誘う副作用を引き起こす。逆に眠気を誘うために改善された薬としては、ドリエルが有名である。


眠気を誘う副作用を抑制した抗ヒスタミン剤を「第二世代」とよび、それ以前の抗ヒスタミン剤を「第一世代」と呼ぶ。第二世代の抗ヒスタミン剤は、脂溶性を下げることによって、血液脳関門を突破しないようにした薬である。

○アラキドン酸カスケード

抗原抗体複合体を受容した肥満細胞はヒスタミンを放出すると同時に、アラキドン酸カスケードを活性化する


アラキドン酸カスケードは、膜のリン脂質を構成する脂肪酸の一つ、アラキドン酸を出発物質とした一連の合成経路である。ホスホリパーゼCがリン脂質からアラキドン酸を切り出し、遊離したアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼの働きでプロスタグランジンに代謝される。シクロオキシゲナーゼの代わりにリポキシゲナーゼが作用した場合は、ロイコトリエンとなる。


プロスタグランジン・ロイトコロエンはヒスタミンと同様に、Ⅰ型アレルギーを引き起こす。

○花粉症



図2 杉の雄花と花粉

I型アレルギーの代表的な症例が、花粉症である。厚生労働省によれば、スギ花粉症が最も多く、日本人の25パーセントにも昇るらしい。主症状はくしゃみ、鼻水、目のかゆみ等であるが、大きく分けて、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎とに分類することができる。どちらも、花粉を構成する粒子が肥満細胞に捉えられ、ヒスタミンが放出されることから反応が始まる。

・アレルギー性鼻炎

 鼻炎の場合、まず知覚神経にヒスタミンが作用すると、花粉を排出するためとして、くしゃみと鼻水が起こる。そしてヒスタミンはロイコトリエンと共に毛細血管の透過性を向上させ、浮腫となる。これが鼻詰まりの原因である。

・アレルギー性結膜炎

  ヒスタミンが知覚神経に作用すると、鼻と同様に花粉を排出しようとして、涙がでる。また痒みも生じる。

○まとめ


・マスト細胞は、Ⅰ型アレルギーの原因となる細胞である。

・抗原が細胞膜上の抗体を架橋すると、マスト細胞はヒスタミンの脱顆粒を起こす。

・ヒスタミンはアレルギーの原因物質であり、抗ヒスタミン剤が炎症に有効。




○参考文献

・厚生労働省 「的確な花粉症治療の為に」
・Wikipedia
 肥満細胞
 花粉症
 アラキドン酸カスケード 
 Allergy

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